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トラブル関連

M&Aは、円満に契約が成立すれば、売り手にも買い手にもメリットが多いものですが、トラブルを引きを越すリスクも存在します。
事前に起こりうるトラブルの要因を知って、対策をしましょう。

case 1

判断が感情的になってしまう

M&Aを行う際、つい感情的な判断をしてしまうケースが少なくありません。
たとえば、譲受企業に「付き合いが長い企業を選ぶ」「ブランド力があるという理由だけで企業を選ぶ」といった判断が"感情的な判断"にあたります。
M&Aを行う際、判断のきっかけとして感情を取り入れることは一概に間違いとはいえません。しかし、きちんと合理的な判断もしなければ、「M&Aでよい効果が得られなかった」「実は財務状況が危ない企業だった」など、失敗を招いてしまうケースもあります。
感情だけで判断をするのではなく、データなどの根拠に基づいて「その企業の財務状況は問題ないか」「その企業を選ぶことでよいシナジーは期待できるか」などを合理的に判断してください。
case 2

情報漏洩が起きてしまう

近年、さまざまなシーンで情報漏洩によるトラブルが危ぶまれていますが、M&A取引においても情報漏洩には細心の注意が必要です。
たとえば、「M&Aを検討している」という情報が取引先に漏洩し、今後に対する懸念を抱いた取引先から、取引停止を言い渡されてしまうようなケースがあります。また、従業員に告知すべきタイミングの前にM&Aの情報が社内に漏洩し、従業員のモチベーション低下や離職などが起きてしまうこともありえます。
基本的な対策としては、売主候補は,秘密保持契約を結んだうえで,買主候補に詳細な情報を開示することで情報漏洩リスクを防衛することができます。
情報漏洩は社内外問わずさまざまなトラブルが発生する要因となりますので、M&Aを進める際には、しっかりとした情報漏洩対策を行ってください。
case 3

関係者のあいだで意見が割れる

M&Aを円滑に進めていくためには、事前に経営陣のあいだで意見をすり合わせ、共通の認識を持つことが大切です。
譲受企業と交渉を進める最中、株主や役員などといった関係者との意見不一致が原因で、M&Aが頓挫してしまうケースは少なくありません。また、せっかくM&Aが成約したにも関わらず、従業員が反発したことによってM&A後に期待されていたシナジーが得られないようなケースも。
こうした事態を招かないためにも、経営陣はもちろん、従業員に対しても将来的な不安や不遇がない環境を約束し、関係者全員で共通認識を持っておくことが大切なのです。
case 4

相手先企業を尊重しない

売却先との不和は、M&Aがなかなか成約に結びつかなかったり、頓挫してしまったりする原因となりえます。
お互いに譲れない条件はあるはずですが、どちらかの意見を押し通すのではなく、お互いを尊重しながら話し合いを重ねることが大切になります。
成約後にはお互いに「これが一番よかった」と胸を張って言えるよう、しっかりと話し合いを重ね、よい関係性を築き上げていくことを意識してください。
case 5

M&Aアドバイザーを介さず直接交渉する

M&Aをトラブルなく進めるためには、M&Aアドバイザーの力を借りることも非常に重要となります。アドバイザーを介さずに直接取引をしたことによって、不利な条件での成約となってしまう可能性もあるためです。
特に、積極的にM&Aを行っている大手企業が買い手となる場合だと、社内にM&A専門チームを持っているケースが多く、M&Aに関する知識が豊富です。対して売り手がM&A未経験だと、知らないうちに売り手にとって不利な条件で進んでしまうこともありえるのです。
アドバイザーを介さずに直接交渉したほうが手っ取り早く感じるかもしれませんが、専門家であるアドバイザーの手を借りて、よりよい条件で成約につなげられるようにしましょう。
case 6

デューデリジェンスで事実とは異なる情報を伝えてしまう

M&Aでは「デューデリジェンス(DD)」と呼ばれる、経営実態や事業運営の精密検査を行います。DDは買い手側が売り手側に対して行うものであり、M&Aの意思決定において非常に重要な要素となります。
そんなDDにおいて、事実とは異なる誤った情報を伝えてしまうと、買い手からの不信感を買ってしまいます。
意図的に情報操作を行うのはもちろんですが、意図せず事実とは異なる情報が伝わってしまったときでも、買い手からの信頼はガタ落ちです。事実をしっかりと伝えるだけでなく、何か懸念点などがある際には早めに伝えるなどして、信頼を損なわないようにしてください。
case 7

書類が未整備で予期せぬトラブルを招く

特に中小企業に多いのが、書類が未整備のために予期せぬトラブルを招いてしまうことです。
「株主名簿などが整っていないために、株主の所有者が正しく把握できず株式を譲渡できない」
「取締役会の議事録などがなく、役員登記を正しく行っていないのではないかと疑いをかけられる」といったように、M&A取引の進行を妨げる要因となるのです。
こうしたトラブルを招かないためにも、事前に司法書士などに相談し、書類を整備しておきましょう。
case 8

買い手側に不誠実な対応をしてしまう

一方的に条件変更を申し出るなど、買い手側に不誠実な対応をしたことで信頼関係にヒビが入ってしまうこともあります。
よくあるのが、ある買い手とM&Aを進めるなかで、今よりもいい条件で別の企業が買収を希望してきたために、買い手側に「価格を上げてもらえないか」と条件変更を求めてしまうケース。
M&Aでは買い手と売り手のあいだで信頼関係を構築することが非常に大切です。不誠実な対応をとったことにより、M&Aが頓挫するだけに留まらず、大きなトラブルに発展してしまう場合もあります。
条件変更をしたい場合にはまずM&Aアドバイザーなどの専門家に相談し、アドバイザーを通して相手側に交渉をしてみるなど、信頼関係を損なわないための工夫を忘れないようにしてください。
case 9

M&A取引中に業績が悪化してしまう

M&A取引はどれほど短くても数か月の時間を要し、年単位で取引を進めていく場合も多いです。そのため、順調にM&Aの交渉がまとまって取引を進めている最中に業績が傾いてしまい、M&Aの話が立ち消えるような場合もあります。
M&Aの取引中はさまざまな手続きが必要になるため、普段以上に多忙を極めてしまうもの。しかし、今まで以上に気を引き締めて本来の業務を行っていくことが大切です。特に流行や世相に左右されやすい業界の場合には細心の注意を払いつつ、M&Aアドバイザーの力も借りるなどして取引を進めていきましょう。
case 10

優秀な従業員が離れてしまう

場合によってはM&A成約後に従業員と雇用契約を結びなおすこともあるはずです。その際に、雇用契約の再締結をきっかけに、退職を希望する従業員がいる可能性もあります。
高いスキルやノウハウを持った従業員が退職するとなれば、会社にとって大きな損失となるでしょう。ときには、従業員の退職によりM&A取引後に想定していた効果が発揮できなくなってしまうケースもありえます。
従業員の退職を防ぐには、従業員に寄り添った経営戦略やビジョンを構築するとともに、従業員に対してしっかりとした説明を行い、企業の将来に希望を持ってもらうことが大切です。